入学願書には「志望理由」を記入する欄があります。願書に添付する資料として「面接資料」や「調査表」「アンケート」の提出を求めている学校もあります。
面接資料には、「本校をどのように知りましたか」「本校のどこを評価しましたか」「お子さんの子育てについてお書きください」といった項目があります。「幼稚園・保育園での生活状況」「お稽古ごと」「本人の長所短所」などの記入を求めているケースもあります。お子さんが試験を受けている最中に「アンケート」に記入して提出しなければならない学校もあります。「書く」ことがうんざりするほど多いのです。
しかも、いざ、記入する段になると、多くのご両親が頭を抱えることになります。たとえば、志望理由一つとっても、どう書いていいか混乱するのです。「公立は荒れているから」「仲良しの○○ちゃんも通っているから」「有名小学校だから」「制服がかわいいから」「家に近いから」「中学受験に有利だから」「エスカレータ式に大学まで進学できるから」等々ですが、それをストレートに書けないばあいもあります。
「御校の建学の精神に深く共感した」とか、「在校生の礼儀正しさに感銘した」「緑が多くて教育環境のすばらしさに惹かれた」などは、市販図書にサンプルとして載っていた文案をコピーしたとか、志望校の学校案内やホームページからの切り抜きではないかと疑われるような内容だと、願書の段階でチェックが入るかもしれません。願書を提出したときから、入試はスタートしているとおもってください。
幼児教室の先生からは、学校案内に書かれているようなことを書かないでください、何としてでも入学したいという熱意が感じられません、これでは滑り止め受験がミエミエです‥‥などと、きびしく指導されて、何回も書き直しを求められます。この段階で、願書対策はもっと早めにスタートしておけばよかったとわかったとしてもお子さんの援護射撃にはなりにくいのです。
願書対策からスタートさせるメリットは、願書の記入項目をじっくり検討できることにあります。願書提出期限ぎりぎりになってから書いたのでは、どうしてもありきたりの内容になってしまいます。「判で押したような内容」では、面接官の心を動かすことはできません。一夜漬けと1年をかけた志望理由は大きな違いがあります。
もう一つ、見逃せないメリットというより、願書対策を先行させる最大の利点は、「志望理由」や「家庭の教育方針」「わが子の長所短所」など、書いた内容に添って準備できる点です。たとえば、「家庭の教育方針」を「思いやりのある子」とした場合、1年をかけて思いやりのある子に仕立て上げることも可能です。「困っている子がいたら、どうしたのと声をかけてあげようね」と折にふれて教えておけば、行動観察のときに、前の子を突き飛ばすようなことはないはずです。ついでながら、この行為を試験官が見つけたら一発でアウトとおもってください。
志望校の教育方針が「自主性を重んじる」というのであれば、子供への口出しは控えるようになります。躾や挨拶を重視する学校であれば、1年の期間をかければ何とかなると思いませんか?
受験を思い立ったら、できるだけ早めに志望校を絞り込み、願書対策をスタートさせてください。それが効率のいい受験対策にもつながるだけでなく、合格への近道になります。
*蔵書房ホームページより転載。一部加筆しています。 |